エメラルドを考える
HP作りと併用しながら、ずっと温めていた「やりたかったこと(妄想含)」を楽しみながらこなしています🥰
エメラルド──これは私の永遠のテーマのひとつです。
とても懐の深い石で、豊満で妖艶な女神が、地球から少し離れた場所を地球と付かず離れず一定の距離を置いてぐるぐる周回している・・・そんなイメージが私の中でずっと定着しています。でもとっても体感しやすい女神なので、いつかしっかり勉強してみたいと思っていました。
こうしていま再度エメラルドを試してみると、めちゃくちゃシックリきます。😆💓👍
「エメラルドは地球の男女の性別を超えてくるから歳をとってから使ってね」と若い方にアドバイスをしてきましたが、やっと自分がエメラルドを持てる歳になりました。マジ慈愛の源泉に直通です。
今回は、復習がてら以前受講したGIA(米国宝石学会)のズーム講義の内容とマイノートを見直しながら、「エメラルド」についてまとめてみました。
🌟エメラルドを深く理解するために、「ベリルとは何か?」という基本から順番にひもときます。
-
そもそもベリルとは?
-
どうして色がつくの?
-
エメラルドの結晶はどんな環境で生まれる?
-
産地によって何が違うの?
という流れでまとめています。
🌟エメラルドについて ─ ベリルの世界から
1. エメラルドとは?
エメラルドは、鉱物グループ「ベリル(Beryl)」に属する宝石です。
ベリルに微量の**クロム(Cr)やバナジウム(V)**が含まれることで、あの鮮やかな緑色が生まれます。
宝石品質のものは、深い緑色と高い透明感を持ち、古代より「王の石」として珍重されてきました。
2. そもそもベリルとは何? ─ 基本組成と特徴
ベリル(Beryl)は、化学式Be₃Al₂Si₆O₁₈で表される珪酸塩鉱物です。
ベリルは以下の元素からできています。
-
Be(ベリリウム)
-
Al(アルミニウム)
-
Si(ケイ素)
-
O(酸素)
この4つが集まって、六角柱の結晶を作ることがベリルグループ共通の特徴です。
他の元素が含有されていないので、ベリルはクリアカラーになります。
3.基本のベリル【ゴシェナイト】の結晶過程
透明なベリル「ゴシェナイト」の結晶は
マグマが冷えていく過程で、
↓
まずシリコン(Si)と酸素(O)が四面体構造を作り、
↓
そこにアルミニウム(Al)、ベリリウム(Be)が加わることで、
↓
無色透明なベリル結晶(ゴシェナイト)が生まれます。
これに微量元素が混入されることによってさまざまな色に変化します。
エメラルドになるためには、さらに他の元素が必要になるということです😊
この時点でピンと来る方はすごいと思いますが、シリコン(Si)と酸素(O)の四面体構造は鉱物の基本的な形の一つなので、ベリリウムが5パーセント入ったのでベリルになりましたが、他の元素が入れば他の鉱物になります。
ちなみに、ゴシェナイトの産地は下記の通りです。
・アメリカ(ゴシェン発祥地)・・・歴史的な意義あり
・ブラジル・マダガスカル・・・現在の主力産地
・パキスタン・ロシア・ナミビア・・・高結晶品質が狙える
・中国・・・手頃な価格帯で広まり中
*ゴシェナイトの産地すべてからエメラルドが産出されるということはなく、環境がそろわないと色石にはなりません。エメラルドは貴重な石ですね。
ではここからは無色のベリルにどうすれば色がつくかということに入っていきます。
4.ベリルに色がつくということ
無色透明なベリル結晶(ゴシェナイト)に微量の
-
クロム(Cr)
-
バナジウム(V)
が入り込むと──
▶︎ **ベリルが緑色に染まり、「エメラルド」**になるのです✨
それもたった0.01〜0.5%という微量で、劇的な色の変化が起こります。
ベリルの仲間には、色違いの美しい石もあります。
-
アクアマリン(青):鉄(Fe)による発色
-
モルガナイト(ピンク):マンガン(Mn)による発色
🌟
ベリルという基本骨格に、
微量元素が加わることで、さまざまな宝石に変わるのです。
5.ベリリウムは全体の5%しかない
エメラルドの化学式において、ベリリウム(Be)はなくてはならない元素ですが、
実はベリリウム(Be)は、割合として全体のわずか5%程度しか占めていません。
🌟
大半は、ケイ素(Si)と酸素(O)によって支えられています。
5パーセントという少量でベリルという石になるとは小さくてもすごいパワーがあります💓
クロムとバナジウムは0.01〜0.5%の微量
そしてエメラルドの緑色を生み出す元素の
クロム(Cr)とバナジウム(V)は、全体のわずか0.01〜0.5%で発色させる。
🌟
ものすごい微量で作用することに驚きます。本当にエッセンスという感じですが、
“少なければ少ないほど響く”という普遍のエネルギーの定石のようなものを感じます😊
6.【元素まとめ】
【1】ベリリウム(Be)とは?
-
元素記号:Be
-
原子番号:4
-
周期表:2族(アルカリ土類金属の仲間)
-
色:銀白色の金属光沢
-
比重:1.85(とても軽い)
-
硬度(モース硬度):5.5〜6
🌟 とても軽くて硬い金属です。
【2】アルミニウム(Al)とは?
-
元素記号:Al
-
原子番号:13
-
周期表:13族(ホウ素族元素)
-
色:銀白色の金属光沢
-
比重:2.70(軽い金属)
-
硬度(モース硬度):約2.75
🌟 軽く、耐食性が高く、電気もよく通す万能金属です。
【3】ケイ素(Si)とは?
-
元素記号:Si
-
原子番号:14
-
周期表:14族(炭素族元素)
-
色:暗灰色の半金属光沢
-
比重:2.33
-
硬度(モース硬度):6.5〜7
🌟 地球の岩石の骨格をつくる、最重要元素のひとつです。
【4】酸素(O)とは?
-
元素記号:O
-
原子番号:8
-
周期表:16族(酸素族元素)
-
色:無色(気体)、液体酸素は淡青色
-
比重(気体比重):1.429 g/L(空気よりやや重い)
-
硬度(モース硬度):―(気体なので硬度なし)
🌟 生命を支える基本元素。宇宙でも地球でも超重要!
【5】クロム(Cr)とは?
-
元素記号:Cr
-
原子番号:24
-
周期表:6族(遷移金属元素)
-
色:銀白色の金属光沢
-
比重:7.19(重め)
-
硬度(モース硬度):8.5
🌟 非常に硬く、錆びにくい!宝石の発色にも深く関与します。(ルビーの赤色の原因もクロム)
【6】バナジウム(V)とは?
-
元素記号:V
-
原子番号:23
-
周期表:5族(遷移金属元素)
-
色:銀灰色の金属光沢
-
比重:6.00
-
硬度(モース硬度):約7
🌟 金属に少量加えるだけで超強力な合金をつくる隠れた実力者。エメラルドの緑色にも関与。
【7】リチウム(Li)とは?
-
元素記号:Li
-
原子番号:3
-
周期表:1族(アルカリ金属元素)
-
色:銀白色の柔らかい金属
-
比重:0.534(非常に軽い!)
-
硬度(モース硬度):0.6
🌟 最も軽い金属。電池や医療、ガラスに使われる重要元素です。
ここまで「基本形のベリル」のお話で、次からは「エメラルドの結晶話」になります😊
7.エメラルドが結晶する過程は2パターンある
エメラルドがクロムとバナジウムで発色することがわかりました。
ではどのような過程で結晶するのでしょうか。
エメラルドは2つの異なる環境で結晶することがわかっています。
-
【A】ペグマタイトタイプ
-
【B】熱水タイプ
この2パターンです。
🌋【A】ペグマタイトタイプとは?
ペグマタイトとは、
マグマがゆっくり冷えたときにできる、粗い粒子の岩石のことです。
この中で、
▶︎ ベリルが成長し、
▶︎ クロムやバナジウムを取り込んで、
▶︎ エメラルドに育っていきます。
🌋
ペグマタイトタイプのエメラルドは、
高温・高圧の環境でじっくり成長するため、結晶が大きめになりやすい特徴があります。
🌋「ペグマタイトタイプ」のエメラルドをもう少し詳しく
🌋 どんな環境?
-
**花崗岩マグマ(珪長質)**から「ベリリウム(Be)」が供給され、
-
苦鉄質岩・超苦鉄質岩から「クロム(Cr)」と「バナジウム(V)」が供給されます。
*花崗岩マグマ(珪長質): 石英、長石が豊富な酸性の明色系・粘性高いマグマ (対義語は苦鉄質)
*苦鉄質・超苦鉄質岩:鉄・マグネシウムが豊富な塩基性の暗色系・粘性低いマグマ
🌋つまりマグマが冷める過程で、真逆の性質を持つ岩石のマグマたちが出会い、そこからエメラルドの元となる元素「ベリリウム、バナジウム、クロム」が選出されて役者が揃うということです。
🌋 どうやってエメラルドは結晶するの?
-
花崗岩マグマ(珪長質)が冷えてできた石英脈を通して、
-
**ベリリウム(Be)・クロム(Cr)・バナジウム(V)**が運ばれます。
-
それらが結晶片岩の中で合わさり、
-
エメラルドが結晶します💎✨
※結晶片岩:地下深くで高い温度と圧力を受けることでできる変成岩。含まれる成分により多種となります。
➡️ 「マグマの力」と「周りの岩の成分」が奇跡的に出会ったとき、
ゆっくりと美しいエメラルドが育ちます。
もうひとつの「熱水タイプ」を見ていきます😊
💧【B】熱水タイプとは?
熱水タイプとは、
熱水(高温の地下水)が岩石の割れ目を流れ、元素を運ぶことで結晶するタイプです。
-
火山岩や花崗岩が風化・侵食され
-
その間を通る熱水により
-
泥岩や片岩にベリリウム、クロム、バナジウムが運ばれ
-
条件がそろうとエメラルドが結晶します
💧
▶︎ 熱水タイプは、より低温・低圧で育ち、
▶︎ 特有の繊細な美しさを持つエメラルドが生まれます。
💧「熱水タイプ」のエメラルドをもう少し詳しく
💧 どんな環境?
-
火山岩(苦鉄質)や花崗岩(珪長質)が、長い時間をかけて浸食されて、
-
**泥岩(貝岩)**というやわらかい地層ができます。
- そこに地下深くから熱水が流れ込んでいきます。
💧 どうやってエメラルドは結晶するの?
-
地下の断層や亀裂に沿って、熱水が移動します。
-
泥岩の中で、
-
ベリリウム(Be)
-
クロム(Cr)
-
バナジウム(V) がギュッと濃縮されます。
-
-
その場所で、エメラルドが結晶化します💎✨
🌟
➡️ 「水の力」と「岩の成分」が合わさって、エメラルドが育ちます
なるほど!材料になる元素が揃えば、
ざっくり「マグマと岩」か「水と岩」の環境下で
エメラルドは結晶する!
次に国別の結晶タイプを探っていきます😊
8.主な結晶タイプの産地
国名 | 主な結晶タイプ | 特徴・備考 |
---|---|---|
コロンビア | 熱水タイプ | 世界最高峰。石灰岩に熱水が浸透し、独特のインクルージョン |
ザンビア | 熱水タイプ | 産地により。鉄分優勢なら青みが強く深い緑。シックで現代的 |
ブラジル | 両タイプ(主にペグマタイト) | 産地が多く、バリエーション豊か。高品質あり |
ジンバブエ | ペグマタイトタイプ | 色が濃くて鮮やか。小粒ながら高品質 |
ロシア | ペグマタイトタイプ | ウラル山脈。緑が均一で落ち着いた印象 |
中国 | 熱水タイプが主流 | 新興産地。四川省など。まだ量は少ない |
🌟「ペグマタイトタイプ」か「熱水タイプ」さらに「クロムとバナジウムの量」によって、各国特色が出ます。
元素が持つ色の影響
クロム・・・青みを帯びた深い緑、濃くて落ち着いた印象
バナジウム・・・やや黄みがかった明るい緑、透明感あり
産地によって違う特色
- ブラジル:一般に「バナジウム優勢」。明るめ、黄緑〜緑、産地差あり
*ミナスジェライス州(Nova Eraなど)バナジウム系が多い。透明感のある明るい緑
*バイア州(Carnaíba)クロムとバナジウムが混在するタイプ。色がやや濃い
*ゴイアス州(Santa Terezinha)両方を含むが、バナジウム優勢。中〜淡めの色味 - ジンバブエ:クロムが多い。濃くて深い緑、青緑系
-
ロシア産:クロム、バナジウム両方バランスよく含む。落ち着きある色味
-
コロンビア産:純粋なクロム発色中心、やや青緑
-
ザンビア産:場所によって変わる。バナジウム優勢だと黄緑がかる
ここで素朴な疑問が湧いたので調べてみました🤔
✨疑問
「ペクマタイトタイプ」と「熱水タイプ」のどちらが早くエメラルドは生成されるの?
✨答え
熱水タイプのエメラルドのほうが、早く作られます。
📚理由
-
熱水タイプ(コロンビア型)
→地下を流れる熱水は高温高圧で移動が速く
→地下深部の熱水が割れ目を通って短期間(数年〜数千年)で鉱物を結晶させる。
→ エメラルドの結晶も比較的スピーディーにできる。 -
ペグマタイトタイプ(ザンビア・ロシア型)
→花崗岩マグマが冷え固まるプロセスは非常に時間がかかる
→ マグマが地下深くでゆっくり冷えながら、鉱物が超長期間かけて大きく育つ。
→ そのため結晶も「じっくり」時間をかけて成長する。(数万年〜数百万年規模)
早いといっても数年から数千年をかけて結晶!長っ😲
ハライトのように数日で結晶する岩石もあれば、
数千年かけて結晶する石もあって驚かされます。
「熱水タイプ」のほうが透明感があって美しいイメージを受けました。
9.クレオパトラとエメラルド
古代エジプトの女王クレオパトラはエメラルドをとても愛していたといわれています。
当時のエメラルドは、
▶︎ エジプトの「クレオパトラ鉱山(モンス・スマラグディヌス)」産のものといわれています。
▶︎ この鉱山はほぼペグマタイトタイプでしたので、色はやや鈍かったかもしれません。
🌟以上、エメラルドのまとめでした。
結晶タイプ、産地、バナジウムとクロムの含有量で印象が変わることがわかりました。手持ちのエメラルドの産地がわからないので「差」を比べることができませんが、こつこつとエメラルドを増やして試していきたいと思います。
何にしても、勉強し直してさらにエメラルドの「懐の深さ」がとてつもなく広がりました。エメラルドは「地球が大好きな宇宙枠」の人のための石でした✨😆
エメラルドと一緒に採掘される「パイライト」「ブラックトルマリン」は何となく相性が良さそうなので、ヒーリングで試してみます。
「エッチングベリル」についての章もあったのですが、長くなるので別枠にいたします。
あれやこれやと調べものをしていると、一日があっという間に過ぎていってしまいます。
長々と失礼いたしました。最後まで読んでいただきありがとうございました😍
参考資料
- ウイキペディア
-
Giuliani G., Groat L.A. (2019)
-
Saeseaw S., Renfro N.D., Palke A.C., Sun Z., McClure S.F. (2019)
-
Palke et al., 2019
-
Burlakov & Burlakov., 2018
-
GIA Gems & Gemol